46億年の恋

 

シネマート六本木で観てきました!松田龍平安藤政信主演です.


監獄一の暴れ者,香月(安藤政信)が雑居房で有吉(松田龍平)に首を絞められて死亡する.
彼は全面的に自分の罪を認めていたが,警部(石橋蓮司)と警部補(遠藤憲一)は事件の捜査を開始.偶然同じ日に殺人の罪で入所した2人の少年について聞き込みをするうちに,獄中で起きた奇妙な殺人事件の謎が深まっていく…….


安藤政信の美しさに心奪われ,松田龍平の繊細さに感心し,刑務所の独特な表現に唸り,個性的な構成に引き込まれる作品なんですが,全体を通すと,『?』という感じです.
ラブストーリーと銘打っていますが,それはまた違う感じがします.なんていうんでしょうか,ラブストーリーと一括りにしてはいけないような….単純な映画ではないんですね.いろいろ考えるし,すごく難解だった.

妃紗は,政信演じる香月史郎の死に様を描いた,逝く為に何をしてきたかを辿った作品であって,それを有吉淳の目線でつたった作品と捉えています.
史郎は,魅力ともなりえる程に暴力的で,狂気を纏って行動するけど,別に誰かを傷つけるのが楽しいんじゃなくて,そんな自分を止めてほしい,罰して欲しい,この世から消してほしいのね.

そんなに死にたきゃ自分で死ねばいい.そう思うけど,そう簡単にはいかない.死は,甘く魅力的だけど手に入れるのは困難で.自分で自分を消すことは出来なくて.でも消えたくて.手を下された時,待ってましたと言わんばかりに受け入れる姿がそれを証明しているんじゃないでしょうか.


淳が『宇宙と天国.ここから出てどっちに行きたい?』と聞いた時,史郎は『宇宙.人がいないから』って答える.
だけど,彼は死にたくて.結局天国に行ってしまって.矛盾してる気がしたけど,それだけ虚無的に生きていたということなんだろうか.

淳の『本当はそっち(天国)に行きたかったんだね』という言葉が妙に耳に残っています……….淳は,史郎自身でさえ気付いていない,史郎の奥底にある願望を知っていたんでしょうか.
 殺したい程愛しているのに,
 君は死にたがってるのに,
 君は僕の手で死ぬことを拒んだ………

手を汚させなかったのは,史郎なりの淳への愛情表現だったのかもしれませんが,残された淳はこれからどうやって生きていくんでしょう.


―ここから出て宇宙と天国、お前はどっちにいきたい?
―一緒に行ったら,駄目かな.僕は君みたいになりたいんだ…

史郎から淳への逆質問.更に質問.でも,この問いへの答えを史郎はついに返さなかった.