クラッシュ

「And the Oscer goes to……Crash!!!!!!」 
  

名優ジャック・ニコルソンアナウンスの元,今年のオスカー作品賞をgetした,クラッシュ.やっと観ることができましたぁ〜〜★☆

世界一の犯罪都市ロサンゼルス,24時.ハイウェイで起こった一つの自動車事故をきっかけに『衝突』の連鎖が起こり,様々な人の運命が少しずつ流れてゆく….刑事,検事とその妻,自動車強盗を繰り返す少年達,成功したTVディレクターと妻,真面目に働く鍵屋,病院窓口の女性主任,小さな雑貨屋の主人と娘….多くの人種が触れ合い生き抜く街で,愛を交わし,憎しみをぶつけ合い,翻弄される….

1時間50分の上演時間の中で,結論となるものは語られない.だけど,とても多くのことを観客に残す作品だと思います.
成功した黒人を憎む人種差別主義者の警官が,黒人TVディレクターにいちゃもんを付け,更にその妻を辱める.その後彼女が事故に巻き込まれたとき,助けに現れた自分を陵辱した男を前にして叫び続ける.「触らないで!あんただけは嫌!!」
人種差別主義者の相棒警官に嫌気が差し,自分は違うと思っている.黒人ディレクターがまたも警官に囲まれた時,「厳重注意という形で助けてやろうと言っているんだ」と言ったとき,ディレクターの彼は凄みのある表情で「助けてくれなんて頼んだか?」と返す.
ヒスパニック系の鍵屋が信じられず,ヒステリックに「明日また家の鍵を全部替えて!あいつは絶対に仲間にこの家の合鍵を売り飛ばすわ!」と叫ぶ白人の女.見守る白人ではない家政婦.
強盗を恐れ,護身用の拳銃の購入を決意した雑貨屋の主人.GUN SHOPのオーナーに「あんた,イラク人だろう」と訝しがられる.けれど彼らはペルシャ人.「彼らからすれば我々はみんな同じなのよね」とつぶやく妻.
白人街に現れた少年2人.前方を歩く白人たちに必要以上に神経質になる.少年の一人がバスに乗ろうと提案する.もう片方が拒否する.「何で乗らないんだよ」「何で、バスの窓があんなにデカイか知ってるか??乗ってる俺らをみて笑いものにする為さ」

こんな風につらつらと日常生活で普通に起こる出来事を描いているわけです.ただ,違うのが「人種差別」というキィワードが入っていること.差別をする人,される人.見てる人.条件は様々だけど,アメリカという国に厳然として存在するパブリックな犯罪を正面から切っている訳です.人種の坩堝,自由の国なんて言ってるけど,本当にそう思って暮らしているのは,白人種だけかもしれないですね.白人種でない人は,大小あれど常に差別と戦っている.
そして,解決法が見つからない.作品中も「差別をなくすためには…」みたいな政治家演説は出てこない.そういう作品じゃないんですよ.差別があるって事実を描いて,それを否定しない.そして差別のあるアメリカっていう国も否定していない.だからオスカー獲れたんだと思う.

あとは観客がどう取るかだよね.これ観て「あぁ差別は止めよう」って思った白人種の人もいたと思う.そして「差別の何が悪いんだよ,人間には上と下があって然るべきなんだ」と再確認した人も居るでしょう.

………日本人として日本で生活しててよかった.妃紗の一番の感想はコレです.