離れたくない

一人は弟のように可愛がっていた子で,もう一人は夜遊び仲間で屈託なく話せる悪友だった.
今日,また妃紗の大好きな仲間がバイトを卒業しました.
就職と引っ越し.止める理由が一つもない,完璧な卒業.

弟のように可愛がっていた子は,妃紗よりバイトとしては先輩で,しっかり者の優しい子.妃紗を本当に慕ってくれていて,映画の話はこの子と一番合った.一緒に映画観たこともあった.シフトが被ると,嬉しくて仕方なかった.二人でやっちゃいけないこともたくさんした.

悪友は,タメ年でちょっと変わった子だった.掴み所がなくて飄々としてて最初は訳がわからなかった.でも,不思議な魅力があって人を不快にさせない力を持ってた.幼い頃から過激な私生活を送っていたみたいで,どこか世の中を喰っている子.その心の底を,見せようとしてくれた事も何度もあったけど,妃紗は聞くことがとうとう出来なかった.

バイトの時の妃紗は,二重人格.お客さんと対峙してる時や仕事が詰まってる時なんかは有り得ない位冷静で集中してて,ピリピリしてる.暇なときは,ぶつぶつ文句言って,帰りたいって駄々こねてみんなを困らせて,甘えてた.どっちも妃紗の姿で,どっちかが演技とかそんなことはないの.その事を特に理解して,受け入れてくれていたのが彼らでした.
2人が居たから,ここまでバイトを続けられた.嫌な客が来ても,時給が安くても頑張れた.

かけがえのない,大切な友達.

どうして離れなきゃいけないんだろう.ずっと一緒にはしゃいでいたいのに.
妃紗一人が,孤独になった気分.軽くへこむ.